自己肯定感を高める方法|選択理論心理学の基本と実践
- イバショの樹DXライター
- 4月25日
- 読了時間: 13分

スマートフォンやパソコンで何気なくSNSを開いたとき、タイムラインに流れてくる知人の近況を見て、焦りや落ち込みを感じてしまったことはないでしょうか。
「あの人と比べてわたしは...」という気持ちを消そうとして、自己肯定感について書かれた本を開いてみる。でも「ありのままの自分を認めましょう」と簡単に書かれた言葉に、少し違和感を感じる場面もあるかもしれません。
自己肯定感を高めたいと願いながら、どうしても自分を認められず、かえって苦しくなってしまう。
「選択理論」は、そうした状況を少しずつ変えていくためのヒントになる心理学です。
落ち込んだり自分を責めたりする感情を無理に前向きにするのではなく、「自分が今、選べる行動や考え方」に目を向けることを大切にしています。
本記事では、選択理論の基本的な考え方から自己肯定感を育てていくための具体的なステップまでを順に紹介します。「つい自分を責めてしまう」「つい無理に前向きになろうとする」本記事がそんな方の心を軽くするヒントとなれば幸いです。
目次
選択理論とは?基本の考え方をわかりやすく解説

自己肯定感を育てるための土台として、まずは「選択理論」がどのような考え方なのかを確認していきます。
この章では、選択理論の基本的な考え方を次の3つのポイントから整理します。
「自分が選べること」に集中する考え方
感情を無理にコントロールしない仕組み
人間関係を良好に保つための活用法
これらを知ることで、日常の行動をどう変えていけばよいのかが分かりやすくなります。
選択理論は「自分が選べること」に目を向ける心理学
選択理論とは、アメリカの精神科医であるウィリアム・グラッサー博士が提唱した心理学です。この理論の大きな特徴は「人の行動は、誰かから一方的に動かされるのではなく、自分の内側の欲求を満たすために自ら選択している」と考える点にあります(参照①、④)。
私たちは普段、周囲の環境や他人の言葉によって「落ち込まされた」「悲しまされた」と感じてしまうことがあるかもしれません。しかし選択理論では、そうした反応も含めて、自分自身が選び取っているものと捉えます。
ただ、これは「すべて自己責任として考えなさい」というものではありません。むしろ、「自分の行動は自分で選べる」と思考することで、他人の評価や環境による無力感に陥ることを防ぎ、今、自分にできることに集中するための考え方です。
感情を直接変えようとしないのが選択理論の特徴
自己肯定感を意識するとき「もっと前向きにならなければ」「落ち込んではいけない」と、自分の「悲しいと感じている」正直な感情を抑え込もうとして苦しくなることもあるかもしれません。
選択理論では、人間の行動を「思考」「行為」「感情」「生理反応」の4つに分けて考えます(①)。このうち、「感情」や「生理反応(汗をかく、心臓がドキドキするなど)」は、自分の意志で直接コントロールするのが難しい領域だとされています。
そのため、選択理論ではコントロールしにくい感情を無理に操作しようとはしません。代わりに、自分で選びやすい「思考」や「行為」を変えることに目を向けます。
たとえば、「悲しい」という感情を消そうとするのではなく、「とりあえず温かいお茶をいれる」「少し外を歩く」といった小さな行動を選ぶことで、結果的に感情も少しずつ変わっていくのを待つというアプローチをとります。
人間関係をよくするためにも使われる
選択理論は自分自身のコントロールだけでなく、家庭、職場、学校など、あらゆる人間関係をより良くするための心理学としても広く使われています。
人間関係で悩みが生じるとき、私たちはしばしば「相手の行動や考え方を変えたい」と願ってしまうかもしれません。しかし、他人の行動は、自分の意志で動かせるものではありません。
そこで選択理論では、相手をコントロールしようとするのではなく、自分自身が「相手とどう関わるか」を選び直すことを大切にします。
具体的には、相手を責めたり批判したりする代わりに、
相手の話を聴く(傾聴する)
支援する
お互いの違いを認めて交渉する
といった関わり方を増やしていきます。
自分が選べる前向きな関わりを重ねることは、結果として相手との関係を良くするだけでなく、「自分で状況を良くする行動を選べた」という自分への信頼にもつながっていきます。
選択理論で考える自己肯定感とは?

「自己肯定感」というと一般的には「高いほうがいいもの」「低いと直さなければならないもの」と思われがちですが、選択理論の視点で見ると、言葉の捉え方が少し変わるかもしれません。
この章では、選択理論の考え方に基づき、自己肯定感との向き合い方を次の3つの視点で整理します。
「上げる」ことへのプレッシャーを手放す考え方
他人の評価と自分の価値を切り離す重要性
自分を責めることと、正しく振り返ることの違い
これらを知って、自己肯定感を養うための心の土台を整えていきましょう。
自己肯定感を「無理に上げるもの」と考えない
世の中には「自己肯定感を高めるための方法」があふれています。しかし、それらを試してもなかなか効果を感じられず、「自分はやっぱりダメなんだ」とさらに落ち込んでしまう方もいるのではないでしょうか。
厚生労働省(③)によると、自己肯定感(セルフエスティーム)とは「自分の価値を肯定的に捉える感覚」を指します。多くの場合はこれを、ポジティブな言葉を自分にかけたり、無理に自信を持ったりして「高める」ものだと考えがちです。
しかし、選択理論における自己肯定感は、無理に作り出すものではなく、「自分が選んだ行動に納得できているか」という自己信頼の積み重ねとして捉えます(④)。
今の自分を無理やり好きになろうとする必要はありません。まずは「今の自分は、今の自分なりに最善の選択をしている」と受け止めることから始めてみてください。
他人の評価で自分の価値を決めると苦しくなる
私たちは、誰かに褒められれば嬉しくなり、批判されれば深く傷つきます。しかし、自分の価値を「他人がどう思うか」という外部の基準に完全に委ねてしまうと、心は常に不安定になってしまいます。
選択理論では、他人の考えや行動は「自分では直接コントロールできないもの」と考えます。自分の価値を他人の評価(外部コントロール)に依存させてしまうと、相手の機嫌や反応次第で、自分の価値が上がったり下がったりするように感じてしまうのです。
自分を肯定する力を育てるには、評価の軸を「他人がどう思うか」から、「自分は自分の求めているものに近づく行動ができているか」という内側の基準に移していくことが大切です。
たとえ周囲からの評価が得られない場面でも、「自分は誠実に行動することを選んだ」と自分自身で認めることができれば、自己肯定感が大きく揺らぐことは少なくなっていきます。
「自己評価」と「自己否定」は違う
自分を振り返るときに、「なんて自分はダメなんだ」と自分を責めてしまう。これは「自己否定」であり、自分を成長させるための力にはなりにくいものです。
選択理論では、自己否定ではなく「自己評価(self-evaluation)」を非常に重視します(②)。自己評価とは、自分の行動を責めるためのものではなく、その行動が「自分の願いを叶えるために役立っているか」を客観的に確認するための「道具」として捉えます。
自己否定と自己評価の違いを整理すると、以下のようになります。
項目 | 自己否定 | 自己評価 |
視点 | 自分の性格や人間性を責める | 自分の「行動」に注目する |
言葉の例 | 「私はいつも失敗するダメな人間だ」 | 「このやり方は、今の目的には合っていなかった」 |
その後の行動 | 無力感を感じて動けなくなる | 「次は別の方法を選んでみよう」と次に進める |
目的 | 過去の自分を裁くこと | 未来の選択をより良くすること |
「自分を責める」のをやめて「自分の行動を評価する」という習慣を持つことが、自己肯定感を無理なく育てられます。
自己肯定感を育てる選択理論的アプローチ

前章では、自己肯定感を無理に上げようとせず、自分の行動への納得感が大切であることを確認しました。
この章では、実際にどのようなアプローチで自己肯定感を育てるのかを見ていきます。ここで押さえておきたいポイントは、次の3点です。
「変えられないもの」と「選べるもの」を分ける
直接コントロールしにくい感情ではなく、行動を少しだけ変える
自分との小さな約束を守り、自己信頼を積み重ねる
これらを順に意識していくことで、自分を責めるサイクルから少しずつ抜け出す手がかりがつかめるはずです。
「変えられないもの」と「選べるもの」を分ける
悩みや不安を抱えているとき、私たちはつい「あの人の態度が冷たい」「過去にあんな失敗をしてしまった」と、自分ではどうにもならないことに気を取られてしまうかもしれません。
選択理論のアプローチでは、まず目の前の状況を「自分が直接変えられないもの」と「自分が選べるもの」に分けるところから始めます。自分がコントロールできないものにエネルギーを使いすぎると、思い通りにならない無力感に陥るためです。
具体的には、状況を以下のように整理してみます。
変えられないもの(コントロールできない) | 選べるもの(コントロールできる) |
他人の考えや行動、機嫌 | 自分が相手にどう関わるか |
過去に起きた出来事や失敗 | その経験から何を学ぶか |
天候や社会情勢などの環境 | 今の環境の中で自分がどう動くか |
瞬間的に湧き上がる感情 | 感情を受け止めた後、どう振る舞うか |
「あの人を変えよう」と考えるのではなく、「あの人に対して自分がどう接するか」を選ぶ。この切り分けができるようになると、自分の手の届く範囲で物事を動かせる感覚を取り戻しやすくなります。
感情ではなく、行動を小さく変える
「もっとポジティブにならなければ」「こんなことで落ち込んではダメだ」と、自分の感情を無理矢理明るい方向へ持っていこうとした経験はないでしょうか。すでにお伝えしたように、選択理論では「感情」は直接コントロールするのが難しい領域だと考えます。
落ち込んでいるときに「明るくなろう」と思うのは、雨の日に「晴れろ」と念じるようなものです。そこで感情をコントロールしようとする代わりに「行動」を小さく変えてみましょう。
たとえば、「不安で胸がいっぱいだ」と感じたとき、その不安な気持ち自体を消そうとするのではなく、次のような小さな行動を選んでみます。
温かい飲み物をゆっくり飲む
一度立ち上がって窓を開け、深呼吸をする
今感じていることを、ノートに書き出してみる
行動を変えると、それに連動して少しずつ感情や身体の反応も変わっていきます。コントロールできない感情に直接立ち向かうのではなく、今できる行動を選ぶことが、感情に支配されない第一歩です。
自分との小さな約束を守る
「自己肯定感を高める方法」と聞くと、「大きな成果を出すこと」や「堂々と自信を持つこと」をイメージする方もいるかもしれません。
一方、選択理論では大きな成果よりも「自分との小さな約束を守る」ことを重視します。なぜなら、自分で選んだ行動を実行できたという事実の積み重ねが、「自分はできる」という確かな自己信頼(自己評価)につながっていくからです。
ここでいう約束は、本当にささやかなもので構いません。
「今日は疲れたから、洗い物は明日の朝にしよう」と決めて、罪悪感を持たずに休む
「少しイライラしているから、メールの返信は5分待ってからにしよう」と決めて、時間を置く
このように、「自分で選び、その通りに行動できた」という経験を日常の中で少しずつ増やしていくことが、過剰に自分を責めないための土台となっていきます。
今日からできる自己肯定感アップの3ステップ

自己肯定感を育てることは、今日この瞬間からの小さな積み重ねで始まります。無理に自分を好きになろうとするのではなく、今の生活の中で「自分で選んでいる」という感覚を取り戻していくことが大切です。
この章では、日常生活の中で無理なく取り入れられる3つのステップを具体的に紹介します。
ステップ1:自分が「選べた事実」を確認する
ステップ2:自分を責める言葉を「次の行動」に変換する
ステップ3:人間関係での「関わり方」を選んでみる
いきなりすべてを完璧に行う必要はありません。まずは、今の自分にできそうなことから一つずつ試してみてください。
ステップ1:今日、自分で「選べた事実」を1つ書く
ステップ1は1日の終わりに「今日、自分で選べたこと」を一つだけ書き出すワークです。
「今日、自分は何もできていない」と感じてしまうとき、私たちは人生に対する「選ぶ力」を一時的に見失っています。ここで大切なのは、自分の意志で「選んだ」事実を思い出すことです。
昼食に自分が食べたかったメニューを選んだ
疲れていたので、SNSを見るのをやめて早く寝ることを選んだ
返信を急がず、一度深呼吸してからメッセージを送ることを選んだ
このように、自分が主体となって決めた事実に気づくことが「自分には状況を変える力がある」という感覚を少しずつ取り戻すきっかけになります。
ステップ2:自分を責める言葉を「次の選択」に変える
自分を責める言葉が頭に浮かんだとき、それを無理にポジティブな言葉に置き換えるのは難しいものです。ステップ2では、自己否定の言葉を「次はどう動くか」という具体的な選択肢に変換します。
自分を責める言葉が出たとき、その言葉を以下のように向けてみてください。
自分を責める言葉(自己否定) | 次の選択に変える言葉(自己評価) |
また失敗した。自分はダメだ | 今回は準備不足だった。次は予定を15分早めよう |
人に嫌われたかもしれない | 相手の気持ちは選べない。まずは挨拶だけ丁寧にしよう |
何も続かない。意志が弱い | 目標が大きすぎた。明日は5分だけ取り組もう |
「自分はダメだ」と自分を裁くのをやめて「次はこうしてみよう」と未来の行動を選ぶ視点が次の行動へ導いてくれます。
ステップ3:人間関係の中で「選べる関わり」を1つ増やす
私たちの自己肯定感は、身近な人間関係の状態に少なからず影響を受けます。相手を自分の思い通りに変えようとしても、思い通りにならない無力感を感じるばかりか、相手から反感を買うことさえあります。
ステップ3は、相手の反応に振り回されるのではなく、自分側の「関わり方」を一つ選び直す練習です。次のような関わりを意識してみましょう。
すぐに反論するのをやめて、まずは相手の話を最後まで聴いてみる
自分の思いを無理に我慢せず、「私はこう感じている」と誠実に伝える
どうしても傷つく相手とは、一時的に距離を置くことを選ぶ
相手をコントロールしようとする手を緩め、自分が納得できる誠実な関わりを選ぶこと。その経験が、結果として自分を大切に扱う感覚を育て、他人の評価に揺らがない自信の土台となります。
まとめ:自己肯定感は、選ぶ力で育てられる
自己肯定感とは、決して揺るがない自信を持ち続けることではなく「たとえ落ち込んでも、また戻ってこられる」という安心感のようなものです。
感情を変えることは難しくても、今日食べるものや、自分にかける言葉、相手への接し方を一つだけ選び直すことは、今のあなたにもできるはずです。
その小さな選択の積み重ねが、やがて「自分は自分の力で歩んでいける」という確かな信頼に変わります。
まずは今日、あなたが自分で選んだ「何か一つ」を、そのまま大切に受け止めることから始めてみてください。
参照一覧
参照番号 | 出典ページタイトル | URL | |
① | より良い人間関係を築くための心理学 | ||
② | 自己評価 self-evaluation | ||
③ | セルフエスティーム | 厚生労働省 こころの耳 | |
④ | 選択理論心理学とは? 日常生活での活用法 | 医療法人社団ファミリーメディカル |

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